第11回(2024年度) JPEAアウォード | JPEA(一般社団法人 日本プライベート・エクイティ協会)
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第11回(2024年度) JPEAアウォード

受賞案件

ESG賞

賞名 ESG賞
対象案件/会社 株式会社資さん
ファンド ユニゾン・キャピタル株式会社
選考理由 ①「ミドル・マーケット案件」の実践的なESGへの取組み
「資さんうどん」は北九州発祥の外食(うどん)チェーン店で、2018年3月にユニゾン・キャピタル(以下、ユニゾン)が投資を行い、2024年10月にエグジットした案件である。投資時は北部九州のみに39店舗を展開していた地域性の高い会社であったが、エグジット時には九州全域・中国・関西地域を含む72店舗にまで拡大し、また関東進出も実現、売上高は投資時対比で2倍以上になった。
投資当初はユニゾンより経営陣に対してESGに関する様々な働きかけを行ったが、これは「ESGのためのESG」を脱しきらない「腹落ちしない」ものあった。そこから、ユニゾンは、経営陣・従業員を巻き込んで、創業者の遺志を継いだ経営理念の下、地に足のついた「等身大のESG」施策を実施した。当社の主たる企業価値向上ドライバーは、新たな出店先でも①日常食であるがゆえのリピート顧客の積み上げとLife Time Valueの向上、および②フルサービスの直営店舗オペレーションを可能とする人材の採用・リテンション、の2つを兼ね合わせた「地域社会に愛される企業」となることである。それを反映させたパーパスの策定、人事・労務関連制度の改善、様々な地域社会貢献施策の実施を行い、雇用の創出・待遇の改善を行いつつ、生産性も向上し業績の大幅な向上を達成した。

②「企業理念」を理解する新たなオーナーへのバトンタッチ
ユニゾンは、2024年10月にすかいらーくへ譲渡する形で当社からエグジットした。すかいらーくは良好な条件を呈示しただけでなく、「人財」を重視する考えの下、当社の組織・体制を維持しつつ、更なる事業成長に向けて同社と協働して出店エリアの拡大に取り組んでいる。PEファンドのエグジットに際しては、リターンが最重要であるものの、ESGの観点を含めて投資先企業のコーポレート・バリューを理解し、それを尊重する買手に引き継いでいくことが重要であり、その観点でも今後のPEの投資案件にとって参考になる案件であると評価した。

EXIT賞

賞名 EXIT賞
対象案件/会社 リガク・ホールディングス株式会社
ファンド カーライル・ジャパン・エルエルシー
選考理由 リガク・ホールディングスは「視るチカラで、世界を変える」というビジョンの下、X線分析をコア技術として、半導体デバイスや分析機器を世界に展開している会社であり、その売上の7割をグローバル市場であげている。
創業者社長が50年近く会社の経営をリードしてきたが、「後進体制を確立するとともにグローバル化をさらに推進し、さらには上場を実現させて永続して成長できる会社にしてほしい」とカーライルに経営がバトンタッチされた。
カーライルは前経営者の負託に応え、外部からCEO、CFO、CHROをはじめ複数の幹部を採用し、プロパー経営陣との組合せにより、創業者のワンマンリーダーシップから脱却し、組織的な経営体制を構築した。また、持株会社化して、日本中心ではなくグローバルマーケットを視野に入れた経営体制に切り替えた。これらのことが功を奏し、売上はカーライル参画前の2倍以上に成長し、EBITDAも順調に増加した。
投資してから3年半後に東証プライムに上場したが、そのディールサイズは直近10年のIPOでトップ10に入るもので、民間PEファンドのIPOとしては過去最大のものとなった。
オーナー企業から公開会社への移行、技術をベースとした製品のグローバル展開の加速、大型上場の実現など高く評価できる点がいくつもあり、EXIT案件として表彰する。

EXIT賞

賞名 EXIT賞
対象案件/会社 奥ジャパン株式会社
ファンド エンデバー・ユナイテッド株式会社
選考理由 ①コロナ禍を乗り越えた大逆転案件
a)最悪のタイミングでの投資案件
奥ジャパン株式会社(以下“奥ジャパン”)は、インバウンド観光客向けに、熊野古道や中山道の妻籠宿などを対象にしたツアーの、企画・販売・運営を行っている会社である。エンデバー・ユナイテッド社(以下“エンデバー”)は2019年4月に奥ジャパンを買収した。旺盛なインバウンド観光客の更なる増加が期待出来た時期であった。しかしながら、投資した約1年後の2020年3月には、コロナ禍拡大を受けた水際対策が開始され、日本中からインバウンド観光客が消え、本件は最悪のタイミングでの投資案件となってしまった。

b)コロナ禍でも生き延び、成長の芽を創造したエンデバーの力
水際対策直後から、奥ジャパンの売上は激減。買収ファイナンスの返済含め、キャッシュバーンによる資金繰り枯渇との戦いが始まった。金融機関との交渉、公的機関からのコロナ対策支援策の導入は勿論であるが、有為な人財の社外流失を防ぎ、社員の士気を維持・高揚させるために、エンデバーが主体となり、インバウンドに頼らない日本人向けの旅行プランの企画・実行を推進した。資金対策の実行と新たな事業の推進により事業基盤を維持できたことで、奥ジャパンは最悪期を脱することができた。

c)事業会社への高倍率でのEXIT
コロナ禍が終了し、インバウンド観光客の復活を受け、奥ジャパンの収益は急回復。将来に向けての堅調な成長が見えた2024年12月に株式会社西武ホールディングスへのEXITを実現した。投資回収倍率、IRR共に投資後順調に進んだ案件をも凌駕する数値を実現。投資途中にEBITDAがマイナスになった案件が、投資後5年で実現したEXIT値としては、類を見ない案件となった。

②EXIT成功の大きな要因に、ファンドメンバーも含めた地元への貢献
本件がコロナ禍の苦戦を乗り越えて大逆転成功案件となった大きな要因として、ファンドメンバーも含めた地元への地道な貢献を抜きには語れない。特に、ツアー対象の
柱である中山道妻籠宿には、「売らない・貸さない・壊さない」との三原則があり、
地元住民の強い絆が作られている。奥ジャパンは、その妻籠宿地元住民からも信頼を受ける存在になっているが、エンデバーメンバーも含めた地元への地味で献身的な貢献を継続したことの賜物と考えられる。革新を求めるPEファンドと、伝統維持が一丁目一番地の地元コミュニテーとの間に親和性が成立した事例としても受賞に相応しいと言える。

選考委員

委員

明治大学 大学院グローバル・ビジネス研究科 専任教授
株式会社岡&カンパニー 代表取締役
岡 俊子氏

委員

MCPアセットマネジメント株式会社 マネージングディレクター
小林 和成氏

委員

株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズ 監査役
中本 和樹氏

委員

泉吉株式会社 常務取締役
深沢 英昭氏

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