2022年度 JPEAアウォード 受賞案件インタビュー ソーシャルインパクト賞 | JPEA(一般社団法人 日本プライベート・エクイティ協会)
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2022年度 JPEAアウォード
受賞案件インタビュー ソーシャルインパクト賞

ソーシャルインクルー株式会社

代表取締役社長

田中浩一氏

ポラリス・キャピタル・グループ株式会社

パートナー

西畑豪人氏

案件概要

対象会社 ソーシャルインクルー株式会社
スポンサー ポラリス・キャピタル・グループ株式会社
売り手 オーナー社長(創業者)
案件発表 2022年11月
資本移動先 投資継続中
事業概要 障がい者総合支援法における障がい福祉サービス・障がい者グループホームの運営
業績推移 2020年11月期:売上高35億円
2021年11月期:売上高66億円
2022年11月期:売上高106億円
主な価値創造 ・役員派遣等を通じた株式上場に向けたガバナンス体制の強化
・市場成長を凌駕する更なる新規施設の開設
・既存施設の収益改善
・収益改善を実現するためのKPIマネジメントの推進
・安定的な人材基盤の構築
・組織強化に向けた教育再構築
・DX等を活用したオペレーション改善 

ー ソーシャルインクルーさんに投資することになった経緯を教えてください。また、田中社長を招聘された背景も教えてください。

西畑:ポラリスの投資コンセプトとしてESGを重視しており、社会的意義がある会社への投資をしたいと考えていた中で本投資案件に出会いました。初めてお会いした当時は、ソーシャルインクルーが立ち上がったばかりの頃で利益は出ていなかったのですが、上場を目指して進められておりました。障がい者グループホームにおいては、重度障がい者の0.2%しかグループホームに入居できておらず、高齢者介護業界以上に需給がひっ迫している業界であり、日本における数少ない成長領域となります。創業者であり当時社長であった渡邊氏がさらなる成長を後押ししてくれるスポンサーを探しており、渡邊氏との複数回の面談を経たのちに、弊社と一緒にやりたいとおっしゃっていただき、株の大半をお譲りいただきました。渡邊氏は、現在は経営から一線引いた形ですが会長として今でも大所高所からアドバイスをいただいております。また、次の社長を連れてきて欲しいとの依頼もありましたので、田中社長に参画してもらうこととなりました。会長からは、福祉領域での社長経験のある方で、成長のスピードを緩めることなくうまくバランス取りながら事業をドライブできる方を依頼されておりましたので、まさしく適任だった田中社長にご参画いただくことになりました。

ー 田中社長の経歴を教えてください。

田中:ゼネコンで働いていたのがスタートで、それからスポーツ業界に行ってプロ野球団の職員をしておりました。僕がいたときころは最下位ばかりでした(笑)その後自分でチームを作りたくなり、プロバスケットボールチームを関西につくりました。その後ライク社に移り、保育と介護の成長を担うポジションの部長職で参画しました。それから約 3年ぐらい部長職、取締役職をやって最後の2年間は代表をやらせていただきました。介護事業の成長もですが、待機児童問題があるなか保育事業もぐっと伸ばすタイミングでしたので、事業の成長曲線の仕事を楽しくやらせていただきました。少しやり切った感を感じ始めたこともあり、退任したタイミングで丁度ソーシャルインクルーのお話を頂戴し、再度チャレンジしたいと思うに至りました。

また、僕が子どものころ、小学1年生からずっと一緒のクラスだった知的障害を持った同級生がいました。その親御さんは、お子様をずっと普通の学校に通わせてあげたいという思いをお持ちでした。僕はその子と仲が良く、通学も含めてずっと6年間一緒にいました。中学校からは養護学校に行くことになったので疎遠になっておりましたが、ちょうどソーシャルインクルーのお話を頂戴する前ぐらいに地元に帰った時に偶然同級生と親御さんを見かけました。同級生も僕と同じ年ですのでいい年になっていましたが、親御さんのほうは当然ですがさらに年を取られていて、同級生の手を引っ張っている姿を見た時にお声掛けをしたところ、「自分たちがこれから先いつまでも面倒を看られるわけではない。どうしたらよいかと頭を抱えています。当然お金も永遠に続くものではないですし。」とお話をされておりました。そんな時にこのお話を頂戴したので、是非この仕事でなんとかそのような方々をサポートしたいと思ったのが、今回この会社にチャレンジさせいただいた大きな理由です。

ー 田中社長はファンドとの仕事上でのお付き合いは人生で初めてだったかもしれませんが、お付き合いされたBefore / Afterのイメージはいかがでしょうか。

田中:ファンドというと一般的にはマイナスイメージもありますが、ポラリスの投資先であるHITOWA社に勤務されている方のお話を以前より聞く機会がありましたので、個人的にはネガティブ印象はなかったです。また、西畑さんと出会ったときに、この人と一緒にできるのだったら、人生をかけてチャレンジしようと思いました。人の命を預かる仕事であるという覚悟をもってお引き受けさせて頂いたのは西畑さんと面談をさせていただいたからです。当然業務上では厳しいことはあるのですが、それも含めて自分の成長にもつながるのでネガティブな印象は全くないですね。また、ポラリスの木村社長からも的確なアドバイスをいただけますし、無理難題ではなくしっかりとした言葉を投げてくれるので、そういった意味でもやりがいを感じています。多くの入居者や従業員がいる中で、その方々の未来や生活を背負っていかなければいけない会社ですので、経営目線で厳しいコメントをいただきながら、成功していくことが重要だと思います。この半年くらいで多くの問題も見つかりましたし、その問題を見つける機会を後押ししてくれたということはすごく大きなことだったと思います

ー 利用者や取引先から見たときにファンドへの不安といったような声は聞きますでしょうか。

西畑:取引先に関しては、これまでは純資産ギリギリで増資しながらなんとかやってきたという印象の会社に対し、今回ポラリスが参画することでBSが改善し、オーナーさん(不動産所有者)や不動産会社さんたちはむしろ安心されているようです。

田中:そうですね、取引先に関しては明らかに変わりましたね。劇的に反応が違います。ポラリスさんにサポートいただいて、人的なところでも大きな支援をいただきました。

ー 田中社長に質問ですが、ソーシャルインクルーさんに参画された中で、大変だったことはありますでしょうか。

田中:成長と安定のバランスを取っていかないといけないところですね。のんびりやって利益もゆっくりでいいよというわけではなくて、スピード感を持ってやっていかないといけない。苦労はいっぱいあるのですが、やはり世の中のためになっていることができているというところが、今のモチベーションが保てているのかなと思いますし、求められるスピード感にも対応できているのだと思っています。

ただベンチャーでスタートしているところがあり、これから上場を目指すという意味での基盤も作っていかないといけない。ポラリスさんにもすごく支援をいただいているので、やりがいを感じながら進めています。課題は多いですが、進めない道ではないので邁進しています。

ー 持続可能な企業として成長するために必要な支援とはどのようなものになりますでしょうか。

田中:私は保育業界も経験していますが、保育業界において拡大が必要だったタイミングで行政から設備投資等の支援をいただいていました。今後この障がい者施設が必要なものだということを世の中の皆様に認知していただくことがまず先かなと思います。その先に行政や地域から援助がいただけるのかなと。そのため、いま私たちがやらなければいけないことは入居者の方々が安心して生活できる環境を作るということと、従業員にとって働き甲斐のある場所になるということ、この二つに全力を尽くしています。あとはいろいろなものが後からついてくると思っています。

ー 先ほど、重度障がい者の0.2%の方しかグループホームに入居できていないというお話もありましたが、この指標を上げていくことで、社会的なインパクトをしっかりと数値化することもできると思います。また、地域雇用の創出もしており、非常に社会的なインパクトがあるなと思っております。このような領域においてPE業界としてどのような支援ができると思いますでしょうか。

西畑:介護保険制度は今後変化する可能性はあります。その時に会社がつぶれてしまい新しい入居者を受け入れられなくなるというのが一番困ります。障がい者グループホームにおける介護保険制度の流れは追い風という投資時の見立てから大きく変わることないと思っていますが、見立て通りに進まなかったとしても利益が出せるようにする。この点はしっかり支援していく必要があると思います。

また、マーケットトップシェアの企業として、ソーシャルインクルーにしかできない、障がい者グループホームのサービス基準などの業界標準を作っていく。これは1社だと時間が掛かるかもしれませんので、PE業界としてサポートする余地があると思います。

ー 各ファンドの投資先で横のつながりとしてのシナジーを模索するというのは業界としてやっていくことができるかもしれませんね。ポラリスさんが投資をするにあたって、ソーシャルインクルーさんの投資時に投資委員会でESGの観点をどのように議論されたか差支えない範囲で教えていただけますでしょうか。

西畑:投資委員会のコンセプトの中でESGの観点でどのようなインパクトがあるか必ず説明をすることになっています。またESGに関する38指標を設定しており、ポラリスの全投資先において四半期ごとにどのように変化しているかをモニタリングしています。ソーシャルインクルーのみならず、全投資先についてESGのモニタリングを行っています。CO2の排出量も測っていますし、離職率、女性経営者・社員比率、有休消化率、産休・育休取得率なども見ています。
専門家の方々とも相談して、ソーシャルインクルーの上場の際にはソーシャルインパクト上場も検討したいと思っています。

ー ポラリスさんでは、ソーシャルインクルーさんに限らず、他の会社においても ESGの観点でどういったインパクトが与えられるかを投資委員会で議論されているのですね。

西畑:そうです。先日新たに投資した宣伝会議では、例えば脱炭素ビジネスライブラリーという教育講座を展開しており、今後ポラリスが入って伸ばしていくことで脱炭素について啓蒙していくなど、投資委員会の中で議論しています。

ー 最後に、ソーシャルインクルーさんをどのような会社にしていきたいか、アピールしたい点などあればお願いします。

田中:規模感や売上、いろいろな指標はあると思うのですが、僕はできればご入居いただいている方、ご家族の方がここで生活して良かったなと言ってもらえる会社にしたいと思っています。また、働いていただいている従業員にもこの会社で仕事ができてよかったなと思ってもらいたいです。皆さんがハッピーになったなと思ってくれて笑顔になってくれたらいいと思っているので、そういう施設であったり、会社にしたいという目標がありますね。

ー 入居して良かったなっていうお声はすでに来ているのではないでしょうか。

田中:そうですね、そういったお声はいただいています。土日にも施設を訪問していますが、ご家族や面会にこられた方とお話をさせていただく中で、そういったお話しをよく聞きます。働いている従業員からも良いお話をよく聞きます。ただ、すべてがそこまでたどり着いているわけではないと思いますので、全員がそう思ってくれる所までやっていけたらなと。そのために元手は重要なので、しっかり利益を出す。そして出した利益を、しっかり皆さんに還元できるようになればいいなと思っています。

本当にありがとうございました。

 

Interviewed by

PR委員会委員 アント・キャピタル・パートナーズ株式会社 代表取締役社長 飯沼良介

PR委員会委員 J-STAR株式会社  パートナー 樫山 雄樹

PR委員会委員 スリーファ―株式会社 代表取締役社長 中山 祥子

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